本日、日本でもソニーの新製品3機種が正式発表となりました。デジタル一眼レフのα77II、4K動画対応のα7S、ポップアップ式EVF内蔵のDSC-RX100M3です。いずれの機種も発売が待望されていたメイン機種であり、異なるセグメントの主力製品が同時期にリリースされたことに、改めてメーカーとしての層の厚さを感じます。
各々の機種の特長や注目すべきポイントなどについては、下記の紹介記事を見ていただければと思いますが、ここではこれらの製品全体にわたっての印象を記したいと思います。
(写真はDSC-RX100M3のポップアップ式電子ビューファインダー)
α77II:高速化されたAPSクラスのハイエンド・デジタル一眼
DSC-RX100M3:EVF内蔵の「The 高級コンパクト」登場!
まず第一に感じたのは、いずれの機種もメインストリームに位置付けることができる実力機であるという点です。
α77IIは約3年ぶりでの世代交代となりますが、実質的にAPS-Cサイズの最上位機種となります。同じセグメントの製品としては、キヤノンのEOS70DやニコンのD7100がありますが、カメラとしての基礎力の点ではこれらの機種を上回っている部分も少なからずあります。前機種のα77では、連写性能やオートフォーカス、電子ビューファインダーの追従性など、やや気になる点も散見されましたが、α77IIではこれらの点に丁寧に対応がされており、上級機として十分な実力を備えるに至りました。噂情報では「Aマウント機はトランスルーセントミラー方式から別の方式に変わる」というものもありましたが、今回のα77IIの登場により、少なくとも当面は継続することが確定したと言えそうです。
α7Sは、当初は「4K動画に対応したフルサイズ機」という面が大々的にアピールされましたが、実際にはα7/α7Rの「高感度性能強化バリエーションモデル」という点の方が注目されているように思います。カメラ本体だけでは4K動画の記録ができないこともありますが、パナソニックのDMC-GH4とは若干立ち位置が異なっています。α7Sのイメージセンサーは有効1220万画素であり、α7の約半分、α7Rの約1/3の画素数となります。さらにRGBフィルターが新型になったことで、ダイナミックレンジも2.3倍向上しているとのことです。α7Sで設定可能な最高感度であるISO409600に対応しているカメラはニコンのD4Sだけであり、両機種の価格差を考えるとこれは驚くべきことかもしれません。
高級コンパクトのDSC-RX100M3は、レンズを広角側にシフトするとともに明るくしたことで、より使いやすいカメラとなっただけでなく、ポップアップ式の電子ビューファインダーを内蔵した世界初のデジタルカメラとなります。初代のDSC-RX100が登場した時も、「これで高級コンパクト市場を席巻する」と確信させられるほどのインパクトがありましたが、今回はそれ以上の驚きをもって受け止められているように思います。「これ以上、高級コンパクトに何を求めるのですか?」というメーカー開発者の声が聞こえてきそうです。
第二に、「ソニーらしさ」が完全に復活しているということです。
特に2012年以降、エポックメイキング的な機種を立て続けにリリースしてきました。高級コンパクトに新しいページを開いたDSC-RX100はもちろんですが、フルサイズのセンサーを搭載した高級コンパクトDSC-RX1、同じくフルサイズのセンサーを搭載した初のミラーレスカメラα7、レンズ型カメラDSC-QX100/DSC-QX10など、いずれも「ソニーだから製品化できた」と感じさせるカメラとなっています。企業全体で見たとき、ソニーの置かれている状況は順風満帆とは言えない状況ですが、こうした製品群を継続的にリリースしている姿を見ると、勢いのあったソニー時代が完全に復活しつつあるような気さえします。
第三に、ユーザーの声を丁寧にフィードバックしているということです。
このことは二番目の「ソニーらしいアグレッシブさ」と裏表の関係にあるのだと思います。顧客ユーザーの声に丁寧に対応することで、既存製品を有効にブラッシュアップできるだけでなく、他社がしり込みするような分野についても大胆に切り込んでいけるのかもしれません。今回の製品で言えば、直接の前機種があるα77IIやDSC-RX100M3で、とくに強くそれを感じます。製品の尖った部分をきちんとまもりつつ、すそ野を全体的に引き上げていくことでウィークポイントをカバーするという製品づくりは、きめ細やかな日本らしい「ものづくり」であると思います。
今回の発表では、新たなレンズは見送られましたので、おそらく近日中に次の発表会が予定されているのだと思います。今後ソニーはどのように飛躍しようとしているのか、そして他社はこれにどう対抗するのか。秋に開催されるフォトキナに向けて、各社ともフル回転で準備を進めていることを考えると、いよいよ期待感が膨らみます。
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