2月12日、「オリンパスはデジタル一眼レフ事業を大幅に縮小する」、というニュースが報道されました。翌13日には、オリンパスは「今後強化するミラーレス一眼カメラと共に、デジタル一眼レフカメラについても従来と変わらず継続して行く」との発表をし、前日の報道内容を否定しました。
もともと12日の報道は、同日に行われたオリンパスの2013年3月期第3四半期決算発表会で、デジタルカメラを含む映像事業を下方修正したことを受けたものでした。その発表を映像事業に絞ってみると、概ね次のような内容でした。
- 通期での映像事業の営業損益予測は、従来見込み80億円の赤字から160億円の赤字に下方修正。(前期は108億円の赤字)
- 通期でのデジカメ販売予測は、コンパクトが559万台(従来見込み650万台)、ミラーレスが61万台(同80万台)に下方修正。
- コンパクトカメラだけでなく、収益源のミラーレスカメラも若干赤字となる見込み。
- 2012年3月末から1割強の人員圧縮により販売管理費を40億円削減したが、今回の赤字を受けて「さらに抜本的な改革」に取り組む。
2012年6月に発表された「新中期ビジョン」では、2013年3月期に映像事業の黒字化を掲げていましたので、結果的に昨年以上の赤字が見込まれる状況は、順調にビジネスが進んでいないことを示しています。オリンパスのファンであれば、心穏やかでない状況だと思います。
とはいえ、このことでオリンパスの戦略が変わるかと言えば、基本的な方向性は昨年6月の「新中期ビジョン」に沿って今後も進められていくものと思われます。その根拠は、次の通りです。
- 2013年3月期の純損益は60億円の黒字(前年同期は489億円の赤字)を見込むとともに、自己資本比率も3.7%から14~15%に改善が見込まれるなど、企業全体としては「苦境」を乗り越えつつあること。
- 新中期ビジョンの段階で、レンズ交換式ではミラーレスカメラに資源集中するという方針を既に示していたこと。
- 同じく、コンパクトカメラでは、ミラーレスで培った先進技術を活用し、高価格帯モデル・高付加化価値モデルを重視する方針も示していたこと。
つまり、オリンパスが昨年6月に提示した方針を変更するのではなく、さらに加速させていくことを意味するのだと思われます。
ところで、冒頭のニュースでは「デジタル一眼レフ」に注目されていました。オリンパスにとってのデジタル一眼レフとは、E-5等のフォーサーズ製品を意味します。しかし、この分野に可能性があるかと言えば、すでにそうした段階は過ぎてしまっているのも明らかです。フォーサーズ規格をオリンパスと共に支えてきたパナソニックにしても、2007年10月のDMC-L10を最後に、事実上の撤退をしています。
噂情報によれば、オリンパスはマイクロフォーサーズとフォーサーズの両方のレンズが使えるカメラを用意している(いた?)ようです。今回の映像事業下方修正を受け、こうしたハイブリッド機の登場に影がさしたように感じますが、仮にハイブリッド機が出なかったとしても、それによって影響を被るユーザーはかなり限定的であるように思います。もちろん、既存ユーザーを大切にするということは、ブランド力を支える上でも重要な要素ですが、むしろマイクロフォーサーズ分野に経営資源を集中した方が、オリンパスユーザー全体の利益に合致するという見方も成り立つような気がします。
いずれにしても、3月には仮称E-P5をはじめとする新製品もリリースされそうです。今まで以上に重点分野に集中した結果、どのように研ぎ澄まされた製品が出てくるのか、考えるだけでわくわくしますね。