デジタルカメラのトレンド


SONY α77II ILCA-77M2

 フィルム時代にもカメラのトレンドはありましたが、デジタルカメラでは今まで以上に「トレンド」を感じます。

 その理由は明らかで、デジタルカメラの主要部品であるイメージセンサーや液晶パネルなどは汎用製品としての面を強く持っているからです。もちろん、異なる製品にまったく同じ部品が搭載されることは少ないですが、逆にすべて1から設計された主要部品が搭載されることはさらに少ないと言えます。

 こうした事情はイメージセンサーや液晶パネルといった比較的独立した部品だけにとどまらず、画像処理エンジンやオートフォーカスモジュール、Wi-Fi等でも多かれ少なかれ同じ状況となっています。その結果、その時々の機能や性能強化の方向性はトレンドとして形作られることになります。

 これまでのデジタルカメラの進化を振り返ると、次のようなトレンドがありました。

  • イメージセンサーの高画素化と大型化
  • 液晶モニターの大型化と高精細化
  • チルト/バリアングル液晶モニターの採用
  • レンズ一体型カメラにおける焦点域の拡大
  • 高価格帯カメラにおける金属外装の採用
  • Wi-Fiの搭載

 これらのトレンドは、イメージセンサーの高画素化のように現時点では一段落つき緩やかな進化段階へと移ったものもあれば、Wi-Fi機能のようにあっという間に標準機能となったものもあります。あらためて、ここ最近の注目すべきトレンドを整理すると、概ね次のようになると思います。

イメージセンサーの高画素化のペースは緩やかになった。
過去には、総合的な描写性能の低下につながりかねないほどのペースでイメージセンサーの高画素化が急速に進んだ時期もありましたが、ここ数年は画素数がほぼ横ばいか、伸びても緩やかな増加となっています。その背景には、高画素化による弊害についての認知がある程度広がったこともあるかもしれません。
処理速度が大幅に強化されている。
パソコンやタブレット、スマートフォンに搭載されているプロセッサーは、マルチコア化などにより処理性能が強化されていますが、その基礎技術が画像処理エンジンをはじめとするデジタルカメラのプロセッサーにも活用されています。他方で画素数の伸びは緩やかとなったことから、機能面では連写性能や連続撮影枚数が強化されており、とくにバッファーメモリーがフルになったあとの連写性能が目立って向上しています。
高感度性能をはじめとする描写力が強化されている。
機能面での強化と同様に画質面でも進化しています。イメージセンサー自体の改善による集光効率の向上や、プロセッサー処理能力の強化により、とくに高感度性能がレベルアップしています。また、ソフト面でのモアレ防止処理も強化されたため、大型イメージセンサーでもローパスフィルターレスが標準となりつつあります。
イメージセンサーを使ってのオートフォーカス機能(コントラストAFや像面位相差AF等)の強化により、AF速度が高速化されてきている。
ミラーレスカメラやコンパクトカメラのコントラストAFも進化をしているとともに、イメージセンサー上での像面位相差方式の採用など、イメージセンサーを使ったAF速度も高速化されてきています。同様に、デジタル一眼レフでのライブビュー撮影時のAFも高速化しています。
光学式の補正だけでなく、電子的な補正を前提としたレンズ設計が主流になりつつある。
今までは電子的な補正は「邪道」といった共通認識があったと思います。しかし最近では、電子的な補正を前提にレンズ設計がされるケースが増えてきたように思います。といっても全面的に電子補正に頼るのではなく、たとえば歪曲収差補正は電子的な対応をメインに行い光学設計は解像力を重視する、といったハイブリッド型のレンズ設計が主流になりつつあるように感じます。逆に光学補正にこだわることで差別化を図っているメーカーもあります。
可動式の液晶モニターを搭載する機種が徐々に増えてきているとともに、液晶モニターを反転させての「自分撮り」が可能な機種も増えてきている。
エントリー機種やフラグシップ機などでは固定式液晶モニターを採用する機種が多いですが、それ以外ではチルト式やバリアングル式などの可動液晶モニターを搭載するものが増えてきています。その中でも180°反転可能なチルト可動など、自分撮りに対応したものが増加しています。
コスト面を重視するエントリークラスを除き、Wi-Fiは標準搭載となった。
Wi-Fiも急速に標準機能化されています。ちょっと前までは、単にデータ転送だけに対応したWi-Fi機能も多かったのですが、昨年末ごろからはスマートフォン等によるリモート操作にも対応したフルスペックのWi-Fi機能を搭載したものが増えています。

 こうしたトレンドは、新しい技術の開発によって実現されているものもあれば、コモディティ化によるコストパフォーマンス向上によって搭載されるようになったものもあります。カメラのステップアップや買い換えに際しては、こうしたトレンドに目配りをすることで、より適切なカメラ選びが可能になります。


関連記事:「デジタル一眼レフの仕組みと選び方

関連記事:「ミラーレスカメラの仕組みと選び方

関連記事:「高級コンパクトの選び方~購入にあたって注意すべきポイント

関連記事:「レンズの種類と選び方のポイントは?

Sponsored Links