最近の傾向の一つにイメージセンサーの大型化があります。コンパクトカメラの分野で描写性能を重視した高級コンパクトが増えてきたこともそうで、今やすべての主要メーカーが高級コンパクトをラインアップしています。
同じことがレンズ交換式カメラでも見られます。現行機で35mmフルサイズのイメージセンサーを搭載したレンズ交換式カメラは、キヤノンとニコンのデジタル一眼レフ各3機種と、ソニーのデジタル一眼α99、ミラーレスα7/α7Rの計8機種ですが、ペンタックスや富士フイルムを含め他社に関する噂情報もたびたび流れています。
言うまでもなく選択肢が増えることは好ましいことです。しかし、新たにレンズ交換式カメラを購入しようとするとき、従来から主流であったAPS-Cサイズのものを選ぶべきか、あるいはちょっと無理をしてもフルサイズにした方がいいのか、迷われる方も増えているのも確かです。ここでは選択のポイントについて整理してみたいと思います。
(写真はソニー α7のフルサイズイメージセンサー。)
35mmフルサイズ機のラインアップ
現行機で35mmフルサイズ・イメージセンサーを搭載しているデジカメは次の通りです。
<デジタル一眼レフ>
<ミラーレス>
<高級コンパクト>
描写性能はかなり違う?
35mmフルサイズを選択する一番のメリットは高い描写性能です。逆に言えば、ボディサイズやレンズの選択肢、価格面など、描写性能以外のすべての点でAPS-Cサイズの方がフルサイズよりも有利です。
それでは、35mmフルサイズとAPS-Cサイズとでは、描写性能に大きな差があるのでしょうか?
結論から言えば、YESであると同時にNOでもあります。つまり、35mmフルサイズとAPS-Cサイズとの間には描写性能に明らかに差がある一方で、一般的な撮影シーンにおいて明確に差を感じることはあまりないとも言えます。
35mmフルサイズとAPS-Cサイズとでは、面積で2.25倍の差があります。フィルムカメラ時代をご存知の方であれば、オリンパスPENや京セラのサムライのようなハーフサイズ版とほぼ同等の大きさとなります。
もし、同じ画素数であるとすると、個々の画素の面積も2倍強違うことになりますので、ISO感度は1段分有利となります。また、個々の画素サイズが大きいことで、階調性の点でもフルサイズの方が有利となります。
逆に、個々の画素サイズを同じ大きさにすると、フルサイズではAPS-Cサイズの2.25倍の画素数となります。仮にAPS-Cサイズで2000万画素であれば、同じ画素サイズにすると35mmフルサイズでは4500万画素になるわけです。APS-Cサイズでギリギリ100本の線を解像できるケースでは、35mmフルサイズでは150本まで解像できることになります。
両者には表現の幅でも差があります。写る被写体の大きさを揃えた場合、仮に35mmフルサイズで50mmF1.8と同じ表現をAPS-Cサイズで実現するには、33mmF1.2のレンズが必要となります。つまり、両方で同じレンズを使ったとしても、フルサイズ機の方がボケなどの表現の幅が広くなるということです。
このように35mmフルサイズは、高感度性能や階調性、解像力、表現の幅の点で、APS-Cサイズよりも勝っています。35mmフルサイズでしか表現できない領域は確実に存在します。
しかし問題は、そうした領域の撮影、違いを実感できる撮影シーンがどれだけあるか、ということです。誤解を恐れずに言えば、一般的なユーザーが遭遇する撮影シーンの9割において、ほとんど差はわからないと思います。また、その差も、機材選択や撮影時の工夫などで大半がカバーできるかもしれません。
フルサイズかAPS-Cサイズか? 選択のポイントは?
最後に、35mmフルサイズとAPS-Cサイズの選択ポイントについて整理をしてみたいと思います。
<35mmフルサイズが適しているケース>
- とにかく最高の描写性能が欲しい。(645Z等の中判システムも視野に。)
- 機能面や堅牢性などの点で最高なフラグシップが欲しい。(フルサイズを展開していないメーカーのフラグシップも視野に。)
- 広角での撮影が多い。(APS-Cでも広角系は充実しつつある。)
- ボディのサイズや重さはあまり重視しない。(比較的コンパクトな機種も。)
- 予算面はあまり気にしない。(比較的安価な機種も。)
<APS-Cサイズが適しているケース>
- 軽快な撮影感やハンドリングのしやすさも大切。
- 「究極の描写性能」までは必要としない。
- とくに小型軽量性を重視する。(マイクロフォーサーズなども視野に。)
- 望遠域での撮影が多い。(フルサイズ版のトリミングではある。)
- コストパフォーマンスも重視する。
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